GIDアーカイヴ。高校生の頃。

◇違う名前。◇

前置きとして知っておいて欲しいのですが、確かに私は体育が苦手でした。苦手で嫌いでしたが、小学校二年の時の水泳以外は、決してさぼろうとか思ったことはありません。きちんと真面目に授業を受けました。しかし、はっきり言って体育の教師だけは、ただの一人も好きにはなれませんでした。

私が入学した高校では、2年から大学の志望校別にクラス分けがされていました。A組からE組が私立文系、もしくは理系志望、私のいたF組が国立理系志望、G組からI組が国立文系志望組と言うふうに。

当然、途中で志望が変わる人もいるし、さらに成績順でクラス変更もあったらしいのですが、F組だけは誰も志望を変えたりもしなかったので、2年から卒業までクラスメイトも担任も変わりませんでした。

そこで、体育の授業なのですが、一番男子の多いうちのF組と、一番男子の少ないその前のE組が合同で行われていました。

E組と言うのは、実は成績順で一番低い人と、大学を志望しない人で編成されていましたから、言わずもがな、やはりガラの悪い男子が多かったのです。

ちなみに中学の時からの私の親友がE組になった時には、私は「頼むからがんばって前のクラスに入って」と言ったものです。朱に交われば赤くなる、の言葉のようにE組の荒れようはひどくなって行くばかりでしたから。

違反の変形制服はもちろんのこと、ついには他のクラスの生徒に「目があった」と言う理由で喧嘩をふっかけ(しかも授業中に)、流血事件も起こしました。

しかし、2、3年にかけてE、F組の体育を担当した体育教師Kは、そんなE組の男子がことのほかお気に入りだったようです。

「どうせお前らはこんな体育より、数学や化学とかをしたいんだろ?」

「俺も昔はE組の連中みたいだったからな、お前らみたいなのは嫌いだ」

「お前らなんかよりE組の方がよっぽどまともだ」

などと、ことあるごとにF組の私達に言いました。

更にはE組の男子はきちんと顔と名前を覚えて、苗字で話し掛けるにも関わらず、F組の男子にはすべて「お前」で済ませていました。もちろん、体操服の胸には苗字の書かれたゼッケンがあるにも関わらず。

それでもF組の男子の中でも体育の得意な子もいれば、運動部でがんばっている子もいたわけで、クラス替えが無かった分、3年になった頃にはF組は結構結束して、そういうKの嫌がらせじみた言動にフォローしあっていました。

しかし、Kはそれがまた気に入らなかったのか、彼は行為を悪質にして行きました。

それはラグビーの授業が始まってすぐの頃です。

グラウンドで体育座りをしたE組とF組の男子の前に立ち、ラグビーのルールや用語を説明していたKは、「じゃあ実際にやってみるぞ」と言いました。

そして、私と、同じクラスで私と同じくらいの身長だったS君を指差して、

「どーせお前ら、体育なんかしたくないんだろ。旗の代わりに目印に立ってろ」

と前もってマークしてあった地点を示しました。

S君は素直に「楽ができる」と思ったのか、喜び勇んで行ってしまったのですが、私は正直「はあ?」と思い、すぐには足が動きませんでした。なぜなら、それは教師が「授業に参加するな」と言ってるわけですから。

しかし、そんな動揺している私の様子を見て、Kは面白くなったのか、「はよ行けよ、コラ」などと言い、まるで犬を追い払うかのような態度を私に取りました。更には持っていたラグビーのボールを、私に投げつけようとしました。

そこで仕方なく私はKの言う通り、ラインのひかれたポイントに立ちました。そしてS君と私を旗代わりにして、ラグビーの授業は再開され、それは10分か15分ほど続きました。

そしてKはにやにやしながら、私とS君に「授業に参加したいか?」などと話し掛けてきました。そこで、私は無言で授業に戻りました。

しかし、体育教師Kの嫌がらせはそんなことでは終りませんでした。

調子に乗ったKはその後の授業でも数回、私を旗代わりに立たせるようになり、私はその度に10分か15分の間、恒常的に授業に参加させてもらえなくなりました。それでも、一応、Kは聞こえもしないのを承知で、「そこでもちゃんと俺の言うことを聞いておけよ」などと怒鳴って来ました。

そんなことが続いたある日のこと、授業の途中で全員にKが5分間休憩をやると言うので、私は木陰で休んでいました。ちょうどそこには、その日の体育を見学していたE組のS君もいて、2人にKが話し掛けてきました。

「なんだ、Y(私の名前)。今日は見学か?」

しかし、にやにやしながらKが話し掛けたのは私ではなく、S君の方。

「はい、そうなんですよ、風邪ひいちゃって」と面白がってるS君。

「あまり休むと単位やれなくなるぞ」とK。

私はこの2人は何を言ってるんだろうと、「え?Yは私ですけど?」と、バカ正直にも反論してしまいました。するとKは不機嫌そうに、「お前らみたいなチビ、どっちでも同じだ」と言い放ち、その場を離れてしまいました。

そう、Kは私をからかってきただけなのですけど、私はそれをさらっと対応することができなかったのです。もちろん、教師が生徒をこんな風にからかうのもどうかと思うのですが。

事実、その後も体育教師Kは授業中にS君を私の名前で呼び続けました。2人とも体操服の胸のゼッケンにはクラスと名前が書かれているにも関わらず。私はもう反論するだけばかばかしくなり、何も言わないようになりました。

しかし、この教師Kのタチの悪い嫌がらせは、やはりただの嫌がらせだけでは終らなかったのです。

数ヵ月後、卒業も近付いたある日のこと、用事で職員室を訪れていた私は担任の教師Mに呼び止められました。

「Kちゃん(私は下の名前でちゃん付けされてました)、君、体育を休んだことあるの?」

「はい?いえ、一度も見学したことないですけど?」

「おかしいなあ。登校日数と体育の出席日数が合わないんだよ」

「そうは言われても見学したことないですし」

「そっか。わかった、K先生に確認しておくよ」

M先生とKにどんなやりとりがあったのかわかりませんが、その後にもらった成績表では、私は体育を1日休んだことになっていました。M先生に聞いたところ、確認する前は3日だか5日も見学したことになっていたそうです。

ただの間違いなのでしょうか、それとも?

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