GIDアーカイヴ。女性ホルモン投与のこと。

◇初めての女性ホルモン投与。◇

※これは私が性同一性障害に関するガイドラインに乗っ取った治療を受け始める前のことですが、その後私は、きちんとホルモン療法、手術療法の適応だと認められています。

私が初めてホルモン投与を受けたのは、そう、ニューハーフの面接でこの街に来た日の、わずか次の日でした。

前日の初めてのニューハーフ体験から数時間後、一眠りしていた私は、隣の布団で眠っていたHさんに起こされました。

「やはり君もホルモン注射とかしたいんでしょ?」

その時のHさんは私にそんな風に訊いてきたと思います。

私がその問いに戸惑いながらうなずくと、

「じゃあ、俺が行ってる所を教えてやるよ」とHさんは言いました。

ちなみにHさんはノーメイクの時には割りと男性っぽく振舞うタイプで、顔も美男子系でした。お店でメイクをしている時でもあまりオンナオンナしてない感じで、もちろん美人ですが、むしろかっこいいって言葉が似合う人でした。

Hさんと私は簡単に準備を済ませ、そのお店の寮からバスで数分の所にあるという病院に向かうことになりました。

ニューハーフになるかどうかということにはまだ気持ちが揺れていた私は、初めての街の初めてのバスでとても緊張していましたが、このままHさんに付いて行けばホルモン投与が受けられることに心が弾んでいました。

それこそ、最近みたいに、簡単に誰でもホルモン剤が手に入る状況にはなかったので、私の中のホルモン投与に対するイメージはやはりダークな感じでしたが、その分、女の子に近付ける「魔法の薬」なんて感じもしていました。

しかし、なぜこうも、いとも簡単にHさんがホルモン投与をしてくれる病院を私に教えてくれるのか、その時の私には考えもしないことでした。数時間前にニューハーフと言う別世界に足を踏み入れたことの非現実感は、まだ私を包んでいて、その後知ることになるHさんの打算など、私にわかるはずもないことだったのです。

「業界的には本当は紹介料をもらうんだけど、君にはまけといてやるよ」

さりげなくHさんはそんなことを言っていました。バカ正直な私はその言葉の裏にあるものには、結局まるで気付かないままでした。

その病院は大通りから一本裏道にある小さな個人病院で、Hさん自身もしばらく前からお世話になっているとのことでした。

小さな待合室で待っていると、やがて私の名前が呼ばれ、なぜかそのまま一緒にHさんも診察室に入って来たので少し驚きましたが、そこには初老の男性医師(院長)と、一人の看護師さんが普通にいました。

Hさんは先生に簡単に説明してくれて、私はいとも簡単にホルモン投与をしてもらえることになりました。具体的な薬はHさんと同じ物を使うことになったようでした。

今思えば、その時のHさんも院長もとてもノリは軽かったです

「そっか〜、君もニューハーフになるのかぁ。」

その時、私を下から上まで眺めながら、院長先生はからかうように言い、

「ダメですよ、先生。この子は真面目なんですから」なんてHさんは言いました。

「じゃあ、婦人科の方に回って」と言う院長の言葉で、私は一度診察室を出て、ピンクのカーテンで仕切られた別の診察室に入りました。そこにはもうHさんが一緒に入ってくることはありませんでした。

「本当はもうしたくないんだけど、院長がしてやれって言うから」

その時の先生(院長の奥さん)はそんなことを言ったと思います。

そして私はお尻に筋肉注射でホルモン投与をしてもらい、帰りに飲み薬をもらって帰りました。

私はもう引き返せないと言う思いと、ほんの少しでも女の子に近付けた気がして、何だか夢心地のままでした。もちろん、精神的なものでしょうが、すごく幸せな感じがしたことを覚えています。

それから私は引越しして、今も別の病院でお世話になっています。

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