トップページGID関連アーカイヴ。恋愛のこと。>初恋。

◇初恋。◇

私が中学一年生の頃、私とY君、そしてWさんという女の子は、「三人組」を組んでいました。もちろん、いつのまにかそうなっていただけで、そこにはまだ恋愛感情などは無く、ただ気持ちのいい友情だけがありました。

「誰かにいじめられたら、私かY君に言いなさいね」

とは、クラスの中でも体の大きかったWさんの言葉です。実際、彼女はいじめられてる私を助けたり、慰めたりしてくれました。

特に学校以外では会ったりはしないものの、三人はいつも一緒にいました。珍しく友達らしい友達が出来たので、私にはとても楽しい時間でした。

しかし、わずか数ヶ月後、Wさんは父親の転勤で急に引っ越すことになりました。

その時、残された私とY君はどうなるのでしょう?ちなみに彼は彼女と同じくらいの背丈にも関わらず、私ほどでは無いにしても、やはりいじめられっ子でした。

そんな二人にWさんは、一通の手紙を残して去って行きました。

「Y君、もっと強くなってえんじぇるを守ってあげてね。二人とも仲良くね。」

そんな内容でした。

三角形の一点が無くなれば、それは直線でしかありません。私とY君の二人だけの関係は、一気に揺らいだものになって行きました。

私以上に、彼女の言葉を重く受け止めたのがY君でした。彼は言葉通りに無理をして、私を守ってくれるようになりました。私がいじめられていると、どこからともなく現れて、身をていしてかばってくれる。その様子は痛々しいほどでした。

やがて、次第に私は彼に惹かれていき、彼に会うことが辛い学校に行く理由になりました。

さて、数ヶ月後、全員参加の臨海学校がありました。

日中の行事が終わり、そろそろ寝る準備をする時のことです。なぜか毛布が人数分より1枚だけ足りません。一体、誰が2人で1枚の毛布で寝るのか、それが問題になりました。

「僕達が一緒に寝るよ」

突然、私の隣にいたY君がみんなにそう言いました。思わず私は彼の顔を見ましたが、彼は大したことじゃないって顔をしていました。

私と彼が異常に仲が良いことは、クラスの誰もが知っていたことなので、それで問題は片付きました。

何も言わず、背中を向けて先に毛布の中にいる彼の横に、私は滑り込みました。どきどきしながらも、それを誰にも知られたくない、私はそんな気持ちでした。

さらに数ヶ月後の春のこと、Y君はふざけて私の部屋のベッドの中にいました。家に遊びに来ていたのです。

その掛け布団の上に座っている私。

「もし君が、、、女の子だったら良かったのに」

Y君は天井を見つめて言いました。

「そうだね」とだけ、私は小さく答えました。

「君、女の子と大差ないよ」

と、彼は慌てて気を使ってくれているようでした。

私はもう自分の気持ちが抑えられなくなって、Y君に手紙を書きました。Y君のことが好きでたまらないこと、ずっと一緒にいたいこと、そしてできれば、私のことを女の子として見て欲しいということを書きました。

せいいっぱいの勇気でそんな手紙をポストに投函したものの、しばらくY君と会うこともない淋しい数日が過ぎました。新学期のクラス替えで、彼とは違うクラスになってしまっていたのです。

そして、返事の電話を約束した日時もかなり過ぎた頃。

居間のお母さんに渡された受話器から、彼の声が聞えてきました。私は電話線を引っ張り、お風呂場に電話を持ちこみました。同様のことを姉達がよくしていたので、お母さんは特に何も言いませんでした。

「遅くなってごめん。あの日、出かけてたんだ」と済まなそうなY君。

「良いよ、、、驚いた?」

「いや、、、わかってたから、別に驚きはしなかったけど。。。」

「そういうことなんだけど、、、ごめんね」

「謝らなくても良いよ、、、君のこと、好きだし」

「え?」

「だから、良いよってことだってば、、、でも、君、それでどうしたいの?」

「うん、、、ほんとは自分でもよくわかんない、、、ただ」

「ただ?」

「普通の男の子と女の子みたいにつきあってくれたらなあって」

「わかった」とY君は笑ったようでした。

でも世の中には、言葉にしてはいけないこと、しない方がよいことがあるのです。私が幸せを感じていられたのはほんの数日間のことでした。その上、少なくとも私は男女の恋愛に関しての知識さえもなかったので、2人の結びつきはまだ幼く、わりとプラトニックなままで。

でも、たぶん色んなものを吹っ切ってOKしてくれたY君と違って、私の心の中では日に日に罪悪感が募って行きました。同性の男の子を好きになってしまった、それは良くないことなんだ、と私は自分自身の固定観念に押しつぶされそうになってしまったのです。

そして、自分の肉体はやはり女の子じゃ無い、という現実が更に私を苦しめ始めました。彼が喜んでくれていた、女の子同様の声も声変わりを迎えて、次第に低くなり、華奢な体つきも顔も、どことなく男っぽくなって、私は鏡を見ることが出来なくなりました。

私の心の中の罪悪感は、自分がどんどん男っぽく変わってしまうことで、彼に対して申し訳無い気持ちを加速度的に増してもいきました。

彼に会いたい、でも会えない、そんな相反する気持ちが私の全て。そして、私といつも一緒にいてくれようとする彼とは反対に、私は彼を避けるようになりました。彼に話しかけられても、彼の顔を見ることもできず、しゃべることもできないのです。

しかしそんな私を心配して、尚更彼は私を追い回しました。学校でも、部活中でも、外でも。

でも、私は自分でも自分の気持ちをうまく説明できないのです。ただもう、彼に会うことも辛くて、怖くて仕方がありませんでした。

彼の胸で思いっきり泣きたい、でも泣き顔は、、、きっと女の子みたいに可愛くは無いんだろうな。たぶん、、、涙も出ないだろうし。彼に抱きしめられたい、、、でも、そんなこと、もうこんな声では彼にそう言えないよね。

そういう思いに苦しんだ挙句、私は自分勝手にも、私の心の中だけで「恋」を完結させてしまいました。

幸か不幸か、3年の新学期でも私と彼は同じクラスにはなれず、高校もわざと彼と別の所に進み、その後しばらく時間はかかったものの、やがて私の「初恋」は終わりました。

トップページGID関連アーカイヴ。恋愛のこと。>初恋。

このページのトップへ

Copyright(C) Since2004 えんじぇる。(sad_angel) All Rights Reserved.