GIDアーカイヴ。大学生の頃。

◇真夜中の電話@◇

それは私が大学1回生の終りの頃、ある冬の日のことでした。

その日に限って、と言うわけでもないのだけれど、私はその日、珍しく夜中に鳴った電話の受話器を取りました。やはり何か虫の知らせを感じたのかも知れません。

「あ、えんじぇる。ちゃん?君、F君のこと聞いた?」

電話はU君からでした。

彼は高校のクラスメイトで、私と同じ大学の違う学部に入学していました。私はそのことだけは知っていたものの、高校時代から特に仲良くしていたわけでもなく、大学入学後も特に会ったこともなかったので、突然の電話に少し驚いてしまいました。

「F君のこと???いや、知らないけど、何かあったの?」

F君も私と同じ高校のクラスメイトで、同じ大学(U君と同じ学部)に入学していました。彼も特に入学後に会ったこともなかったので、私の頭の中にはハテナマークしか浮かびませんでした。

「三日前になるのかな?実は・・・」

私の問いかけに対してのU君の答えは、さらに私を驚かせるものでした。しかし、その後には、やはり「なぜ?」という疑問しか浮かびませんでした。

「じゃあ、明日、大学の門の前で待ってるから」

「うん、わかった」

その後、何とか明日の打ち合わせをして、私は受話器を置きました。

私はそのまま眠れなかったので、しばらくF君の思い出とU君から聞いた話を繋げて考えていました。

F君と私は、実は小学校に上がる前からの知り合いで、小学校と中学校は違う学校だったのですが、高校で同じクラスになり再会しました。彼はなぜか私の想い人だったM君ととても仲良くなり、大抵M君のそばにはF君がいました。当然、F君も少なからず私のM君への想いを知っているようでしたが、彼は特に茶化したりするようなこともなく、今考えれば、ありがたいと思うべき存在だったのかも知れません。

F君とM君にはもう一人仲の良いA君という友達がいて、いつも三人は一緒に行動していたようでした。しかし、大学生活までは一緒に過ごすことができませんでした。

なぜなら、M君とA君は国立の理系の学部に合格したのですが、F君はうまく行かず、私と同じ隣の私立大学に入学していたのです。

F君はそのことを引け目に感じながらも、M君たちの大学も隣なわけだし、しばらくは大学に通っていたようでした。しかし、大学卒業後の針路も気にかかったそうで、いつしか実家に戻り、大学受験に再挑戦することにしたのです。

そして、F君は先日行われた、彼にとっての二度目のセンター試験を受けました。しかし、彼にとってその結果は残念ながら思わしいものではなく、その落ち込んでいる様子は母親が心配するほどだったそうです。

結局、それから数日後のセンター試験の結果が出るのを待たずして、ある日の午後、母親がほんの少し目を離した隙に、F君は独りで遠くに旅立ってしまいました。

ほとんど眠れないまま、次の日の朝を迎えた私は、喪服代わりの黒のダッフルコートで出かけました。そして、待ち合わせたU君の運転する車で故郷に戻り、私たちはそのままF君の実家を訪れました。

出迎えてくれたF君の母親は、「良く来てくれたわね」と精一杯の笑顔を見せてくれました。そして、そろそろ祭壇を奥の部屋に移動したいからと言うので、私たちはそのお手伝いをしました。

そして、私たちは慣れないながらもお線香をあげさせてもらい、F君の冥福を祈りました。

その後、F君の母親が学校での彼との思い出を聞かせて欲しいと言うので、それぞれが彼との思い出を語りました。彼女はうんうんとうなずきながら静かに話を聞いていました。やがてF君の父親も仕事から帰ってきて、ビールを勧めるので、まだ全然飲めなかった私(もちろんまだ未成年だし)でしたが、少しだけ頂きました。

F君の家をお暇する時、彼の母親は涙ながらに私たちの手を握って言いました。

「あなた達は同じことをしないでね」

私はその夜もほとんど眠れないままで、次の日には大学のある街に戻りました。

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