GIDアーカイヴ。大学生の頃。

◇疑惑の電話番号。◇

それは私が大学生の頃、ある日の夕方くらいのことでした。滅多に鳴ることのない私の家の電話が鳴ったのです。とりあえず、私は受話器を取りました。

「はい、もしもし、○×(えんじぇる)ですけど?」

「え、あ、、、あなたは誰?」

失礼な電話もあったもんです、自分からかけて来ておいて名乗りもせず、いきなりこちらの名前を聞いてきたのです。しかも、その声は聞き覚えがないのも当然ですが、そこそこ年配の女性の声だったのです。

「もしもし、どちらにおかけですか?」

「いえいえ、あなたの名前を教えて下さい。○×さん?」

「あ、どこかと間違われたんじゃないんですか?」

「いえいえ、少しお話しませんか?」

「はい?っていうか、あなたはどちらさんなんですか?」

「いえいえ、私のことは良いじゃないですか。お話しましょうよ」

「いや、だから、誰におかけですか?」

私には彼女の言うことがさっぱりわかりませんでした。いきなり知らない女性からかかってきて、ただの間違い電話かと思ったら、お話しましょうとのお誘いです。私は正直、変な人だと思いました。

「○×さん?下の名前は?」

「、、、、、はい?一体、何なんですか?」

「いえいえ、教えてくれても良いじゃないですか。学生さんですか?」

「、、、そうですけど?」

「XX大学?○○大学?」

「あの、、、一体、そちらは誰なんですか?」

「私のことは良いじゃないですか。お年はいくつ?大学何年生?」

私は次第に気持ち悪くなりました。こちらの情報を訊ねるばかりで、自分のことは「私のことは良いじゃないですか」の一点張り。

「、、、もう切りますよ?」

「○×さん、切らないで下さいよ。お話しましょうよ。一人暮らし?」

「どこかと間違ってかけられたんでしょ?」

「いえいえ、○×さん。私はあなたとお話がしたいの」

声の感じは40代か50代の女性です。そりゃ世の中には、確かに間違い電話も出会いの一つなのでしょうが、、、って、私のことは男性だと思ってるのでしょうし。かと言って、当時の私は、(今もですが)話の途中でガチャンと電話を切る勇気を持ち合わせていなかったのです。

「だから、あなたはどちらさんなんですか?」

「私のことなんて、まあ、良いじゃないですか。お話しましょうよ、お暇なんでしょう?」

相変わらず、その女性は名乗りませんでした。

暇じゃありませんから。今から出かけるんですよ」

私は暇だと勝手に決めつけられたことに、少しカチンと来ました。

「あ、じゃあ、またお電話しますね。明日のこの時間にまたかけますから」

「はい?」

「私はあなたとおしゃべりしたいんですよ」

「いや、もう結構ですよ」

私はさすがに電話を切りました。

しかし、彼女の言葉に反して、翌日、電話は鳴りませんでした。

そして、更に数日後、家に遊びに来たRちゃんによって、謎は解き明かされました。

「この間、変な電話がかかってきたでしょ?」

「うん、かかってきたよ。変なオバサンでね、なんか私のこと聞いてきたよ」

「あれ、、、うちのお母さんなの。ごめんね(^^;」

「・・・(絶句)」

実はRちゃんのおうちは母子家庭で、更に彼女は一人娘だったので、そのお母様は少し心配性の所があるのか、彼女の手帳を盗み見て、そこに女性名で書かれていた私の家の電話番号にかけてみたのでした。

しかし、かけて見ると電話に出たのはどう聞いても低い男性の声。お母様は当然、「隠すために女性名で書いてあったんだ」と思ったのでしょう、それで私のことを根掘り葉掘り聞こうとしたのでした。

ちょうどその頃、Rちゃんの帰宅時間も遅いことが続いていたそうで、それを聞くとお母様の気持ちもわからなくはないのですが、さすがに私はため息をついてしまいました。

さて、あの電話の後でRちゃんはお母様に詰問されたらしいのですが、 一応、私のことを説明してくれたそうです。 それを納得したのかどうかは謎ですが、その後、電話はかかってこなかったので、ある程度の理解は得たようでした。

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